何故、日本のW杯の結果によって鎧武の夏映画の面白さが変わるのか

本日から1週間、東映特撮YOUTUBEの企画でスポーツに因んだ作品が複数公開されます。

超神ビュビューンの第1話など珍しいものから、超人機メタルダーの運動会回、天装戦隊ゴセイジャーの「走れ!アグリ」などの名エピソード等8作品が選ばれました。

その中でも今回のメインとして配信されているのが、「劇場版 仮面ライダー鎧武 サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!」です。

この映画は、仮面ライダー鎧武の夏映画で2014年7月19日に公開されました。2014年といえば、ブラジルW杯が開催された年です。というわけでサッカーが非常に盛り上がっていたので仮面ライダーにもその波が来ていました。更に、前年の大ヒットドラマ「半沢直樹」に出演していた片岡愛之助さんが今回の黒幕、仮面ライダーマルス・コウガネを 演じられているなど、当時の時事ネタや流行が一部取り入れられていました。

映画の内容ですが、オーバーロードの襲撃に遭い壊滅状態に陥った沢芽市、一人残りインベスと戦い続ける葛葉紘汰彼の目の前にラピスと名乗る謎の少年が現れる。サッカーを知らない彼にスポーツを通しての平和がある事を説明する紘汰だったが、気が付くと、そこはサッカーによって黄金の果実が争われる世界だった。しかし、暴力による争いのない平和な世界のライダーたちは、次第にお互い憎みあい争うようになっていく、そこにはある男の介入が…端的に言うとこういう話になっています。

まず最初の見どころとして、ライダーに変身しての大迫力のサッカー対決ですね。もう何度目かの鎧武VSバロンですが直ぐに変身する戒斗に対し、たっぷりとボール足に挟んでのバク転などたっぷりとアクションシーンを見せてから変身する紘汰という対比が特におもしろいです。

ゲストととして、当時はタレントとして活躍されていたゴン中山こと中山雅史さん、当時、ジェフユナイテッド千葉所属の佐藤勇人選手とジュビロ磐田所属の駒野友一選手が出演されていました。2010年の南アフリカW杯に出場されていた駒野選手の出演はわかりますが、なぜ佐藤選手が選ばれたのかは、今も昔も謎です。(せめて弟の佐藤寿人選手では?と思います。)

次の見どころとしては、アクションシーンです。中盤、対立するブラーボ、グリドン率いる軍隊と斬月・真、マリカ率いる黒影トルーパーで構成されるユグドラシル軍そしてバロンの三つ巴の戦いは正に劇場版といった大迫力で描かれました。ただ滅茶苦茶長いので途中で今何の映画見ているんだろうという感覚に陥ることがあります。

鎧武とマルスの一連の攻防も魅力的です。バナナ、ドングリ、ドリアンと次々にロックシードを入れ替えて戦う鎧武、それに圧倒的な攻撃力、防御力で答えるマルス、さらには、重量級のカチドキアームズとのパワーバトルも大迫力でした。最後には、場所を変えての馬上の対決、極アームズのソニックアロー攻撃をブリンガーソードではじくマルス、最後は炎をまとったペガサスの姿で挑むも火縄橙DJ銃の斬撃モードで真っ二つにされてしまします。

また、この作品の最大の見どころである11人のライダーが一斉に変身して、ラピスが変身した仮面ライダー冠をボールにしてマルスが変形したゴールに鎧武がライダーキックで叩き込むシーンは、各ライダーのボールの扱いの個性や普段はキックをフィニッシュにしない鎧武がここぞというときにライダーキックを叩き込む爽快感とともに印象に残るシーンとなっていました。

そこからの物悲しいラストシーンへの転換は、これも印象に残ります。鎧武乃風(湘南乃風)が歌う主題歌「YOUR SONG」もまた名曲なので感情が揺さぶられます。

ここからは、タイトルにもある通りこの作品に対する不当な評価や誤解に対する解説をしていきたいと思います。

まずこの作品が不当な評価を受ける理由として、映画公開時期に、日本が既にW杯に敗退していたからというものがありますが、そもそもブラジルW 杯の開催は、6/13~7/14 までの開催であり公開されるまでに既に終わっているわけです。日本のグループリーグ敗退が決まったのが6/27ですが仮に盛り上がったとされるロシアW杯と同じくトーナメント初戦までの勝ち上がりだったとして7/2までなのでたった5日しか変わらないのです。今まで日本代表は、トーナメント初戦を勝ち上がった経験はありません。W杯で敗退したからこの映画は駄作という方々は、日本は高確率で優勝するとでも思っていたのでしょうか?そんなわけありません。彼らの中には、日本は初戦敗退しただの言っている方もいました。そもそも最初はグループリーグ制なので初戦敗退なんてありえません。こういう方々は、そもそもサッカーにもW杯にも対して興味がないのです。ただ、この映画を叩く自分を正当化したくて言っているとしか思えません。

そもそも日本が負けて敗戦ムードになったから映画が盛り下がったんだ。という方もいましたが、この映画は、サッカーをテーマの一つにしていますが、この作品においてサッカーの役割は、暴力による侵略と支配で滅び去ったフェムシンムと滅び去ろうとしている人類に対し、サッカーによる命のやり取りをしない戦いの世界を作ろうとしたものの人間の悪意と憎しみによってもろくも崩れ去っていく様子やそれでも諦めずに立ち向かっていく事の大切さを描いた作品だと思っています。現実でもスポーツには、汚い部分も暗い部分もありますが、悪意に負けず平和にスポーツを楽しむことが大切だと思いますし、その為には、綺麗ごとだけではいけないという部分もあります。このテーマは、ダンスステージの縄張り争いという子供の喧嘩から大人の悪意に惑わされ命のやり取りに発展していくテレビシリーズにも通じるものがあり、ただ平和を謳歌するだけでは、平和を守ることができない現実の厳しさを描くという点でも鎧武らしい映画になっています。ですので、この作品を楽しむためには、そもそもW杯知る必要もありませんし、世界中の人たちが楽しむサッカーというスポーツそのものを通して、人は、どうすれば憎しみや欲望による命のやり取りをしなくて済むのかを考える事こそがテーマだと考えます。劇中でも言っていましたが、勝てば嬉しい、負ければ悔しい、次は勝てるようにがんばる、その精神が大切だと思いますし、W杯に出場できること自体凄いことで32の出場国の半数が脱落するグループリーグで敗退したから映画の見方が変わるなんて言う人は、そもそもこの作品のメッセージも本質も理解する気がなく、鎧武という作品への踏み込みが足りないんだなと思います。

他には、仮面ライダー冠の出番がボールになっているだけという批判がありますが、マルスを倒す直前に全身が映りますし、球体の果物が鎧になるのが売りの鎧武という作品において球体を生かしてボールになるのは、ある意味当然の発想というか、ほかのアーマードライダーの力を借りて身を挺してマルスに直接ぶつかっていく強い意志を感じました。

鎧武がメロンエナジーロックシードを拾ったにも関わらずジンバーメロンになぜならなったのか、というのは、メタ的に考えれば、スーツ改造の手間だったり、ブラックジンバーにスムーズに移行するためなどの理由があると思いますが、ほかにも防御強化だとカチドキと能力がかぶってしまう等の理由があるのかなと思います。

他にもいろいろ言われているのですが、あまり作品の本質の部分とは関係ないものも多く、W杯の話のように無理やり話を広げて史上最低作品のように風潮する方もいますが、ファンの方々は、基本無視でいいでしょう。もちろん作品の賛否は、色々あると思いますが、この作品は、ストーリーもアクションもいいところは沢山あるし、誰かが言っている批判点も勘違いだったり、よく見ると的が外れていると感じる部分もあるので、自分の意見をしっかりと持って好きな作品を楽しんでいくのが一番だと思います。