仮面ライダー鎧武は嫌われていた

本日、東映特撮YoutubeOfficialで仮面ライダー鎧武最終回「変身!そして未来へ!」が配信されました。

視聴者の反応はかねがね好評で「最終回まで見続けて良かった」という声が多数上がりました。

では、当時の視聴者も同じ反応をしたのでしょうか、決してそんなことはありませんでした。

放送当時の鎧武ファンの一人としてリアルタイムの話をしたいと思います。

仮面ライダー鎧武は、2013年10月6日から2014年9月28日まで全47話で放送された平成仮面ライダーシリーズ第15作です。

プロデューサーは、仮面ライダーシリーズではキバ、オーズに続く三回目の登板となる武部直美プロデューサー。

脚本は、魔法少女まどか☆マギカ翠星のガルガンティアなどで人気を博していた虚淵玄氏が起用されました。

まどかマギカで衝撃的な物語を展開した虚淵氏の起用にには放送前からネット上で賛否両論が巻き起こり、彼がファンを公言する平成初期の仮面ライダーシリーズのようなシリアスな展開が繰り広げられるのか。そもそも元々アダルトゲームのシナリオライターを子供向けの番組の脚本に起用するのはいかがなものかという意見も飛び交いました。

多くのファンの期待と不安を背負った鎧武の放送当時の評価は、フルーツが変形して鎧になる変身ギミックやキャストの熱演には評価が集まりましたが、逆にストーリーやアクションシーンは不評の嵐でした。

主な批判点として、話の展開が早すぎてキャラクターの心情が描かれていないので何を考えているかわからない。セリフがアニメ調で長くて違和感が有る。アクションシーンにケレン味がない。登場人物の行動に一貫性がない。などが挙げられていました。

これらの批判点は、主にネット掲示板、当時隆盛を極めていたまとめサイト仮面ライダーの感想を書いていた個人ブログなどで挙げられ、普段仮面ライダーを見ない人たちにも広がって行きました。また、放送当時仮面ライダー鎧武の問題点を書き連ねるWikiサイトも立ち上げられました。(現在は閉鎖済み)

また、視聴率も当時最低の視聴率を叩き出し、夏の映画の興行収入も過去最低で鎧武のせいで仮面ライダーから子供もファンも離れたと揶揄されるようになりました。

現在でも一度大きなバッシングをくらったコンテンツがサンドバッグのように叩かれ、酷いところでは、ファンが非国民扱いされるようなコンテンツもあります。

かつて鎧武もそのような扱いだったのです。

では、なぜ鎧武は、そのような状態から抜け出し現在でも新作ネットムービーが作られ舞台化されたりひっきりなしに新作グッズが発売されるような人気作品になったのでしょうか、それには幾つかの要因があると考えられます。

一つ目の要因は、玩具の売上が高かったこと。

鎧武の玩具売上は当時でも高い方であり、特に変身シーンを再現することが出来るアクションフィギュアAC(アームドチェンジ)シリーズや変身アイテムのロックシードシリーズなどの玩具はコレクション性も高く、シリーズで初めてDX玩具のプレミアムバンダイ*1限定商品が本格的に展開されるなど高評価を受けました。

これが、CSM*2のシリーズ展開にもつながっていると考えられます。

二つ目の要因は時間の流れ。

鎧武が記録した最低記録のうち夏の映画の興行収入は、まだ更新されていませんが、最低視聴率は年々更新され、作品出来不出来でなく少子化テレビ離れなど別の要因が考えられるようになり鎧武が最低の作品であるという証拠に使うことが難しくなったことで批判の流れが収まったと考えられます。

また、当時の批判の論調は主にまとめサイトが多く、普段は仮面ライダーを取り上げない大手まとめサイトも人気アニメ脚本家でもある虚淵氏が脚本を書いていることもあり最低視聴率を更新した時など大々的に取り上げられネガティブキャンペーンが行われていました。しかし、年々まとめサイトの影響も弱まり当時の様な大バッシングが行われるような事は無くなりました。

更には、当時鎧武を見ていた低年齢層がインターネットを始め当時の論調に染まっていない視聴者が顕在化したことも要因と考えられます。

そして最大の要因である、三つ目の要因は、ファンが火を消さなかったことです。

当時、表だって大勢で鎧武を語れる場所は少なく、鎧武を語ろうとするとアンチよりの論調を受け入れざるを得ませんでした。

しかし、アンチよりにならず鎧武を語れる場所があったのです。

それが、ふたばちゃんねる二次元裏板Mayの「鎧武スレ」でした。鎧武スレでは、アンチや荒らしが来てもそれに流されることなく、鎧武の批判点に対してもアンチの論調に流されることなく反論し鎧武に対してのポジティブな作品解釈や考察がおこなわれたり、数々のネタ画像やネタレスが生まれるなど独自のファンスレとして機能していました。

また、ふたばちゃんねるは、まとめサイトへの転載が多く、多くのユーザーが頭を悩ませていましたが、鎧武スレの住人は、基本的にネタレスを心がけ、たまに作品の感想や考察をすることでまとめにくいスレを演出することでスレが荒れるのを防いでいました。

一年間、バッシングを受けながらも無事、鎧武の放送が終了し、次回作仮面ライダードライブの放送が始まってもアンチの勢いは止まりませんでした。

ドライブのスレを立てようとしても鎧武との対立煽りが始まり、今度はドライブの感想が語りにくくなるなどの問題が起こりました。

そんな時、唯一ドライブをまともに語ることができたのが鎧武スレだったのです。

鎧武スレの住人は、「鎧武に関係あるものは全て鎧武」という独特の価値観で冬の映画であるMOVIE対戦フルスロットルでドライブと鎧武が共演したこともあり2作品とも平和に語れるスレとしてドライブスレが正常に立てられる様になるまで重宝されました。

鎧武スレは、当時の殺伐としたライダー界隈で対立煽りに惑わされることなく真正面から作品と向き合っていました。

鎧武スレで評価されたアクションシーンや台詞回しやストーリー構成の巧みさなどの評価点は、現在の鎧武ファンの作品の評価点と共通することも多く、周りに流されず自分の価値観で作品を深堀するその熱量は、現在の鎧武の再評価に大きく関わっていると私は考えています。

勿論、鎧武スレ以外ににも鎧武を評価する声は、冬映画公開やVシネマ化等を機に徐々に増えており、YouTubeTwitterなどでも好意的な評価が出てくるようになりました。

放送当時の評価を知っていれば鎧武のアクションシーンにケレン味があってカッコイイとされる現在の評価は不思議なものですし、虚淵氏の台詞回しやストーリー構成を褒めようものなら人格否定されるレベルだったことを考えれば私も含め自由に鎧武を評価できる現在の状況はやはりファンの熱量が勝ち取った正当な立ち位置と言えるのではないかと考えています。

 

最後に、今、インターネットでバッシングを受けているコンテンツを応援する方々へ、そのコンテンツを救うには、周りの意見に流されず応援すること、出来るだけグッズを買って公式を応援すること、そして何よりもファンが熱量を絶やさない事が一番大事です。

今受けている評価が時代に作られた不当な評価である可能性もあります。時代が変われば、応援してくれている多くのファンがいることでいい方向に評価が変わることも大いにあります。

何よりもあなたがその作品を好きになったことに間違いはきっと無いはずです…

 

 

*1:バンダイが展開するネット通販

*2:コンプリートセレクションモデル、子供用のDX変身ベルトよりもサイズ、素材、塗装、音声などが強化された大人用変身ベルト